関西の社会ニュース

2009年 8月 22日 

復旧に大合併"足枷" 豪雨禍 豊岡・但東町:産経関西(産経新聞大阪本社公式ニュースサイト)

 台風9号の豪雨で、兵庫県豊岡市但東町の民家が裏山の土砂崩れで半壊し、今も土砂が崩れそうな状態が続いている。この家は平成16年の台風23号でも裏山が崩れる被害を受け、当時の旧但東町が1週間後に応急措置を施したが、合併後の同市はいまだに防止策を示せず、「平成の大合併」の弊害が浮き彫りに。本格的な台風シーズンを前に、住人は「このまま家を修理していいのか…」と不安を募らせている。

 「バキッ」。10日午前1時ごろ、京都府境に近い山間の地区に住む区長、衣川伸二さん(59)は自宅(木造2階建て)の1階仏間で、雷が落ちたような大きな物音を聞いた。音がした裏山を見ようとしたところ、1階の寝室に大量の土砂が流れ込んでいた。

 衣川さんら家族はいち早く避難して無事だったが、自宅1階の一部が使えなくなった。夜が明け、地元住民らの協力で何とか家の土砂を運び出したが、現在も裏山は崩れてきそうな気配で、自宅は安心して住める状態ではなく、一家は今も近くの作業場で寝泊まりしている。被災の翌日、市の防災担当者らが被害状況の確認に訪れたが、いまだに具体的な土砂崩れの防止対策を示していないという。

 豊岡市内を流れる円山川や支流が氾濫、旧但東町だけでも死者2人、民家の全壊12戸、半壊21戸、床上浸水18戸などの大きな被害が出た5年前の台風23号。衣川さん宅も床下浸水し、裏山の土砂が崩れ、床下まで流れ込んだ。このときは被害から1週間後、裏山に高さ約50センチの木々を打ち込んで柵(さく)を作り、土嚢(どのう)を積む応急措置がとられた。

 旧町関係者によると、町内では被害が約200カ所あり、迅速な対応が困難だったため、被害家屋1軒につき10万円の交付金を用意。「各地区に単独で工事を要請し、対応してもらった」という。

 今回の被災で、衣川さん宅の修理は少なくとも300万円はかかるとみられる。衣川さんは「旧町時代はすばやく対応してくれた。家を修理しても、次の台風で再び土砂崩れが起きたら…」と不安は消えず、安全な場所への転居も考えているが、「自宅は築100年以上で愛着があり、できることならば住み続けたい」と話す。

 一方、同市但東支所は「(防災の)具体策は未定。9月議会で補正予算を組むが、防災工事は早くても11月になるだろう」と話している。


(2009年 8月 22日  07:00)

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