急ぐな合併・守ろう安土みんなの会 論壇・寄稿文
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合併問題の事実経過

石寺住民 後藤修一

序.新聞記事による合併の経過

 まず最初に、新聞記事にまとめられた合併の経過を御一読ください。
安土町内対立のまま合併へ リコール署名異議申し立て
津村町長 890人分に注文 、住民グループ「信じられない」

 近江八幡市と安土町は、安土町内の内紛をよそに、両市町議会の廃置分合の議決から合併へなだれ込む情勢だ。十一日には津村孝司町長が自身への解職請求有効署名三千九百三十一筆に対し、本請求に必要な署名数をクリアできなくなる八百九十人分を無効とするよう町選挙管理委員会に異議を申し立てた。解職を求める住民グループは「信じられない」と反発を強め、対立の構図はますます激化する。町民同士が推進・反対でいがみ合ったまま、合併へ突き進む。なぜここまでこじれたのか、これまでの経緯を振り返ってみる。

 住民グループは「合併」自体に反対しているわけではない、「近江八幡市と一市一町での法期限内の合併」が民意を問わないまま進められていることに異を唱えているもので、名称も「急ぐな合併・守ろう安土みんなの会」とした。

 そもそも「検討」から始まった今回の合併。昨年の合併検討会議では町民代表が熱心な議論を重ね、行政・議会・住民の十分な話し合いの中で町の将来を決めることが大切であると提言し、法期限内を一つの目処としながらも、合併しない、もう少し時間が必要という結論が出ることも想定して、何が何でも法期限内でというものでもなかった。結論は、住民全体の協議に委ねられたのである。その後の第一回住民説明会(七月―八月)では、この提言を元に町財政や地方分権の進展から「合併の必要性」が話し合われ、合併の組み合わせや期日については第二回の住民説明会や議会で改めて話し合うことが住民に約束された。

 ところが、九月町議会で津村町長は近江八幡市との法期限内合併の方針を発表。住民の中から「民意を問うていない」と反発の声が上がった。

 第二回住民説明会(十二月―二月)は「近江八幡市との法期限内の新設合併」の説明となり、町長は、町長選挙、住民説明会で「町民の理解は得られた」として、合併ヘの準備を着々と進めた。

 住民グループは、独自の住民アンケートを行い、結果を提出するが、町長が受け取りを拒否。合併の是非を問う住民投票条例の制定を求めた署名で、「必要なし」の町長所見を添えた議案が上程さたものの、否決された。住民グループは「条例が制定され、住民投票が行われれば、その結果に従う」としていたがそれもかなわず、町長解職請求へと切り替えた。選管の審査方法や町長による署名者へ取り下げを迫る電話の問題も浮上して、住民監査請求などに発展している。

 この間にも合併協議会が設置され、五回の協議会で合併調印を済ませた。

 住民グループは議会に対し、「リコールの結果を待って、(町民に知らさないまま六月に変更された、当初予定の)九月議会に廃置分合議決を行っても法期限には間に合う」と、六月議会で議決しないよう訴える。推移を見守る県議の中からも「安土町での推移を見定めてから、九月に議決すればよい」との意見が出ている。
町選管は、自分達が「公平、公正、適正」に「有効」とした結果を、もう一度審査することになった。結果は、二十五日までに出る。

引用元:平成21年6月13日(土)滋賀報知新聞 第15365

 事実経過は上記の新聞記事におおむねまとめられています。しかし、もう少し違った角度から今回の合併を見ると他にも事実が浮かび上がってきます。


1.政府の大号令の下で進められた平成の大合併

 今回の安土・近江八幡の合併は国策として進められてきた「平成の大合併」の中にあって、いわゆる合併新法の制定に合わせて各都道府県に要求された、都道府県による合併推進方針に基づいて起こったことだということをとらえておく必要があります。

 滋賀県は平成17年9月県議会で「滋賀県市町合併推進審議会条例」を制定しました。同年12月に「第1回滋賀県市町合併推進審議会」が開催され、合併新法の下で 具体的に推進する市町合併についての議論が始まりました。(議事録などは滋賀県市町合併推進審議会HPから入手できます)

 この審議会は平成18年11月末までに7回の会議がもたれ、同月29日には滋賀県における合併推進のあり方を示した答申が提出されています。滋賀県はその後、この答申に基づき長浜を中心とする湖北の合併、彦根市周辺市町の合併、近江八幡・安土・竜王の合併を具体的に推進することになります。

 平成18年11月に開催された第6回審議会には安土、近江八幡、竜王の各首長が出席を求められ、各市町村の合併に対する状況を確認し具体的な推進方法が検討されています。津村町長はこの審議会の席上で「合併を推進するために県職員の派遣」を要請しています。県はこの要請を聞き入れ中井氏(現副町長)が派遣されることになります。ちなみに、この審議会の会長は後に安土町合併検討会議の会長となる真山達志(同志社大学教授)です。

 このように、今回の合併は県の描いたガイドラインに沿って県の強力な後押しを受けて進められたものなのです。


2.安土町合併検討会議も滋賀県の指導 ? 

 平成20年2月に設置された安土町合併検討会議、「最初に合併ありきの検討会議ではありません」という町長の言葉で始まりましたが、一連の流れからもおわかりのように、「合併が必要」という結論を出すための会議でした。会長に就任したのは真山達志氏、合併検討会議といいながら「合併の必要性」「合併のメリット・デメリット」「なぜ合併という方法を選ばねばならないのか」など合併に関する協議はほとんどなく「安土のまちづくり」というテーマに終始し、最後の2回で事務局と会長が執筆した答申:安土町将来のまちのあり方提言書を承認するという内容でした。(検討会議には、杉原先生と「みんなの会」後藤が参加していました。)


3.住民説明会は合併を進めるための単なる手続き

〜住民の意見を聞くための説明会ではなかった〜

 この検討会議の答申を受けて開催された第1次説明会は「合併検討会議の答申を説明する」という目的で開催されましたが、合併検討会議のメンバーは一人もこの説明会に招集されず、答申を提出した主体が説明するのではなく、答申を受けた行政が開催するという歪んだものになりました。

 結局、この説明会の開催によって「おおむね合併の必要性は町民に理解してもらった」という結論のもと、第二回の説明会には合併の相手先を具体的に提案するという勝手な約束までして終えました。

 その後、津村町長は近江八幡市、竜王町に合併を打診、竜王町に断られると、県と近江八幡・安土との打ち合わせで何か不都合なことが起こったのか津村町長は突然9月議会で八幡との合併協議を宣言。第1次の住民説明会での町民との約束を破って八幡との合併を提案。苦し紛れに「合併検討を公約に当選したのだから」という言い訳を盾に開き直りました。

 第2次の説明会でも近江八幡との合併は反対という住民の声が多数を占めたにもかかわらず強引に合併手続きを進めました。

 以上のような事実を総合すると、今回の合併は町民の意思にかかわらず、滋賀県の市町合併構想に基づき滋賀県に管理された中、県行政主導で実行されたという実態が浮かび上がってきます。
《筆者私的メモ》
 ◎津村町長は県行政の圧力に屈したのか?
   それとも町長の信念に基づく行動だったのか?
 ◎なぜ住民の意思を後ろ盾に毅然とした態度で臨め(ま)なかったのか?
 ◎町民に背を向け、町民を敵に回してまで突き進む理由は何なのか?
 ◎県行政はなぜここまで強引に合併を進めなければならなかったのか?
 ◎「平成の大合併終了」という総務省・政府の方針を
   県行政はどう受けとめているのか?

終わりに 第29次地方制度調査会の答申を受けて

 2009年6月16日、各新聞社は次のように報道しています。

平成の大合併、来年3月末終結 地方制度調査会が首相に答申へ

 政府の第29次地方制度調査会(首相の諮問機関、会長・中村邦夫パナソニック会長)は16日午前の総会に、基礎自治体(市町村)と監査・議会制度のあり方に関し、「平成の大合併」を2010年4月以降は打ち切ることなどを盛り込んだ答申をまとめた。同日夕に麻生首相に答申する。政府は答申を踏まえ、合併誘導策をやめるための合併特例法改正案などを来年の通常国会に提出する方針だ。平成の大合併は、1999年から政府が取り組んでいる市町村合併推進運動だ。99年3月末に3232だった市町村数は、10年3月には1760まで減少する見込みとなっている。

 答申では、大合併を「地方分権の受け皿としての行政体制が整備されつつある」と評価した。一方で、「周辺部が取り残される」などの問題点を挙げて、このまま進めることには「限界がある」とし、現行の合併特例法の期限である来年3月末で一区切りとするのが適当と明記した。

 ただ、自主的に合併を模索する市町村には、一体的な振興を行えるよう国や都道府県が10年4月以降も支援をすべきだとしている。

 小規模なまま残った市町村を支えるため、今後は「定住自立圏」など近隣の自治体が協力し合って行政サービスを維持する仕組みづくりを求めた。政府は答申を受け、周辺自治体と監査委員事務局や保健所などを共同設置できるよう地方自治法改正の作業に着手。

 このように、政府も平成の大合併の矛盾点を認めざるを得なくなり合併推進を打ち切ります。それでもまだ合併に固執しますか?

なぜそこまでして合併しなければならないのか理解できません。


寄稿 2009年6月22日



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